
この記事は「断酒の難しさ 簡単に断酒できるなら依存症ではない」です

結論は「原点に戻る。酒に対して無力であることを認め乗り越える」です
アルコールに依存すると治療の基本は断酒です。
一時的な断酒ではなく生涯断酒です。
断酒後の再飲酒は実はよくある出来事です。
飲酒をコントロールできないのが依存症という病気ですからある意味で当然です。
簡単に断酒できるなら依存症ではないからです。
しかし、しばらく断酒できた人にとっては、また本人だけでなく家族にとってもショックです。
- お酒をやめられなかった頃の私は、断酒1年なんて夢のようにも見えていました
- アルコール専門病院に入院していた頃は、断酒10年・20年・30年と聞くと入院患者とは違って、安全圏の人たちと思っていました
- やがて自分の断酒が継続するようになって、安全圏と思っていた人たちが失敗する姿を見るにつけて、アルコールに依存することの怖さ、断酒継続の難しさを思い知ることになりました

私の感想ですが、結局は初心を忘れてしまった

依存症になると上手に飲酒できない。断酒しかないことを忘れてしまったのが原因のような気がします
酒を上手に飲めない。基本は断酒ということへの認識が甘いという意味では、飲んだり止めたりの方、継続ができない方、断酒を始めたばかりの方とも同じです。
躓くところは大体同じようです
「酒に対して無力であり、上手く生きていけない」というのは依存症のあらゆる方に当てはまります。
言い換えれば断酒のコツは「アルコールに対する無力さ」を忘れない事だとも言えます
今回は断酒継続の難しさという事実の私なりの考えを体験を踏まえて書きました。
アルコール依存症の怖さは、しばらく断酒していてもスリップすると酷い状態に逆戻りしてしまうことです。
私自身信じられませんでしたが、しばらく普通に見える時期があっても、やがて元の状態に戻るのがほとんどです。
私は依存症になると節酒ができない、断酒しかありえないということは、自分の体験はもちろん、他の同じ病気の仲間の体験談を聞いて確信しました。
私の知っている限りの先輩たちの言葉(断酒が長い人から初心者まで)を自分の言葉でまとめました。
私が断酒継続の難しさを知った体験
私が断酒を始めたころ、アルコール専門病院の院内例会で断酒10年の表彰を受けていた人がいました。
当時の私には「10年もやめている=断酒が保証された人」というイメージがありました
- 1年後、断酒10年の人が再飲酒をしたという噂を聞きました。
- そして断酒10年の人の奥さんの体験談から噂ではなく、本当のことだということが分かりました。
- 奥さんは飲んできた日の様子でわかったそうです

しかし本人は再飲酒を認めない
やがて飲んでいる現場を奥さんに目撃されます。

お酒の瓶を持っているのに認めない
- やがて飲んだことは認めたが「自助グループでは絶対に言うな」の一点張り
- 奥さんはアルコール専門病院と自助グループに応援を求めました
- 最初断酒10年の人は抵抗しましたが、あっという間に連続飲酒(飲酒が止まらなくなった)になってしまい、ついに観念しました。
- 結局断酒10年の人は断酒表彰を受けた病院へ再入院することになりました。
奥さんは当時家族会の運営を任されていました。

私は今思い返しても、奥さんは正しい判断をしたと思います
私が長くやめた人が再飲酒することの怖さを初めて知った経験です。
失敗すると過去最悪の状態に戻る
以降何人か、しばらく断酒していたのに再飲酒した人を見てきました。

しばらく断酒をしていても、再飲酒すると「過去最悪の状態」に逆戻りします。しかもあっという間!!
人によっては、普通に飲酒できているように見える時期もあるそうです。
しかし結局は一時的なもので、数ヶ月もしないうちに元の最悪の状態に戻るようです
- 私は「10年もやめたのだから、すぐに元気になるでしょう?」と先輩に尋ねました。
- しかし先輩に「長く断酒すればするほど、失敗したら危ないんだよ」と教えてもらいました。
- やがて長く断酒するほど、再飲酒したら危いというのは、近くで見ていてもよくわかりました。
- たいてい長い断酒の後で過去最悪の状態になります

前回の断酒のきっかけとなった「底つき」よりも、もっと「深い底をつかなければ」上がることができないようです
アルコール依存症は「進行性で死に至る病」と言われます。本当にこの言葉通りです
たとえ数年間酒を全く飲まなかったとしても、また飲み始めるとたちまちもとの飲み方に戻ってしまうのが依存症の怖いところです。つまり長年かけて作り出された依存症の脳の回路が、しばらく酒を止めたことで消えてなくなるわけではないのです。
厚生労働省eヘルスネットより引用
底つきについてはこちら

依存症の人は身体に気をつけたい

しばらくして病院でばったり彼に出会ったのですが、別人のように衰弱して、一気に老けていました
- 長く断酒を続けていると言っても、断酒できるようになるまでの飲酒期間は長い人が大半です。
- すでに身体に大きなダメージを負っています。断酒中に古傷が再発する人も数多くいます
- 断酒後のケアを怠って「もうお酒を飲まないから大丈夫」と思い、食べ過ぎたり、刺激物を摂り過ぎている人は結構います
- 現在治療中の病気のある人はなおさらです。

再発や悪化を起こすため、再飲酒をすると今度こそ死が迎えに来る可能性が高くなります
脳のダメージについてはこちら。

心はもっとひどくなる
私が見てきた限りでは、心の状態は最悪だった時に戻るか、それよりもっと悪くなります。
- 再飲酒したということですっかり自信を無くすようです。
- 今まで「自分は○○だから断酒できた」と思っていたものが再飲酒すると否定されるからだと思います。

どうしていいかわからなくなりますね

せっかく穏やかになっていたのに、前よりひどくなっちゃった
生涯断酒のために

私は色々な人を見て、再飲酒は事前にシグナルが表れると思います
シグナルはアルコール依存症の特徴として際立ったものです。
もっとも他人の失敗だからこそ分かるものですが…。
自惚れ始めた
アルコールの怖さを忘れかける時です。
- 自分が過去、アルコールを飲むとどんなにひどい状態になったかを軽く考えるようになります。
- 私も経験がありますが、断酒2~3年後くらいに「俺はもう大丈夫」「酒のやめ方なら教えてやるよ」そんな考えが頭をよぎることがありました
勘違いしやすいのが、断酒後に日常のストレスへの対応能力が上がることはあります。
しかし、一度依存症になれば、お酒を上手に飲めるようにはなりません。

自分の断酒は大丈夫と思う頃が危険だね
自己憐憫に陥っている
普段の生活で何かにつまずいた時、原因を探らずに結果がでないことばかりにこだわる。

悲劇のヒーローになった気分
- 自分は頑張っているのに、うまく行かない
- どうせ私は…だから
- 私がうまく行かないのは運命で決まっている
自己中心・他人を責める・他人や環境のせいにする
人を認めたり、感謝することを忘れて、自分への称賛を当然と思うとき
- 仲間の体験談を聞いて、そんな話をしてるからやめられないんだ
- うちのミーティング(例会)は俺のおかげで人気がある(またはあいつのせいで人が来ない)
- 俺は○○年やめたから認められて当然
完全にゼロにするのは不可能ですが、自己中心や何かのせいにすることが目立って強くなってしまうのは危険です
生きている限りストレスはなくなりませんが、少しでも減らしていくと、断酒継続は楽になると思います。

自己中は危険なシグナル
原因が自分にあることを認めるのは断酒継続のカギです。

断酒継続で大切なのは飲酒をコントロールできない自分を受け入れる事

私が断酒継続で大切なのは、依存症になると上手に飲めない事実を忘れないだことだと思います
私は飲酒への無力さを認めなかったころは、少しくらいなら飲んでも大丈夫だと思い、再飲酒していました。

でも無力ってネガティブだよね
- 人は動物としての生命力があるので、根本的には力を持ち、強くなりたいです
- 酒を飲んでも乱れないというのは、意志や精神力の強さを感じさせます。
私もスマートな酒飲みにあこがれていました。
しかし私は酒に対して本当に弱く、スマートに飲酒できませんでした。
実際に依存症の私たちは、意志や理性の力では自分の飲酒をコントロールできません
私は飲酒をコントロールできないと認めたから、自分には無理な節酒をあきらめることにしました

私は酒を上手に飲めない自分を認め続けたいです
参考記事
