
この記事は「ノンアルコールは断酒の味方? 敵?」です

結論は「自分の心に聞いて判断する」です
断酒中の方でノンアルコールビールを飲んでいる方はいらっしゃいますか?
断酒生活においてノンアルコール飲料とどうやって付き合っていけばいいでしょうか?
- ノンアルビールを飲んでも肝臓は悪くなりません。
- 飲酒運転にもなりません。
そうならばお酒の代わりにノンアルコール飲料を飲むのはいいことずくめに思えてきます。

私の考えですが、断酒をしている人がノンアルコールビールを飲むことをお勧めはしませんが、否定するつもりもありません
つまり人によって違うという事です。
- また断酒初期にノンアルではなく炭酸飲料を飲んでも物質的な意味で害はありません。
- ダイエット目的で禁酒している人にも飲みすぎなければノンアルコールビール・コーラ・炭酸水は効果があるかもしれません。
私がノンアルコールビールを肯定も否定もしないのはアルコールへの依存度が人によって違うからです。
同じことは甘酒など他の微量のアルコールが含まれている飲料にも当てはまると思います。
ただし気を付けるべきポイントがあります。
- アルコールは依存性があります。
- 長期間飲み続ければ早いか遅いかの違いだけで、誰でも依存していきます。

私は飲む人がノンアルコールビールに何を求めているかで結果は違ってくると思っています
私はアルコール依存症と診断されたので治療のために断酒を始めました。
- 私の今のところ最後の断酒の失敗は12年半前でした。
- 12年前の失敗の引き金はノンアルコールビールです。
今回の記事では私のノンアルビールの断酒失敗体験を書きました
私がノンアルコールビールでの失敗をきっかけに「お酒を我慢する毎日から、お酒に頼りたくなる根本原因を克服していくこと」に目標を変更した経緯をまとめました
治療効果は? 大酒飲みにとってのノンアルコールビール
ノンアルコール飲料を楽しまれている方は、多いと思います。
- ノンアルコールの定義はアルコール分が0.05%以下です。
- 0.05%以下の飲料なら法律上「Alc. 0.00%」と表記できます。
- 最近10年間で市場規模は15倍になっているそうです。

一般的には飲みたい気分だけど、運転などで飲んではいけない時に好まれているのでしょうか?
お酒は飲まないが、ノンアル飲料を好んで飲む方もいるそうです。
- 「お酒は身体に悪い。だからノンアルビール」
- 「リラックス効果があるとされているGABA(ギャバ)が含まれている」
アルコール専門医はノンアルを勧めない
ただ大酒飲みの人にとって、ノンアルビールはどういう位置づけになるのでしょうか?
アルコール専門病院の医師で治療効果があると勧めている人は少数派だろうと思います

認めていても「限定的」です
- 「飲みたい時は仕方ないけど…飲まないほうがいいよ」と言っているのはよく聞きます
- 「飲酒欲求が起きたときは、ノンアルビールを飲んで我慢しましょう」という先生は、私の知っている範囲ではいません
- もっとも内科など、アルコール依存症の専門医以外では逆になるかもしれません
参考までに「新宿OP廣瀬クリニック」理事長 廣瀬 久益先生の動画です。
廣瀬先生の話の内容は、精神科・特にアルコール依存症に詳しい先生に多い意見の代表例です。
私の体験談です
さて私はどうかというと依存症者がノンアルビールを飲むことに否定するつもりはありません。

ただ私にとってアルコール0.00%のノンアルコールビールは悲劇をもたらしました
私の体験を書いておきます。
ヒントになりそうなところは、参考にしてください。
飲んだり止めたりの繰り返し
- 私がアルコール依存症と診断されて、初めてアルコール専門病院に入院したのは2001年です
- 2回目の入院が、2003年です。この時に、脳が委縮していると告げられました。MRI画像では隙間がありました

脳が委縮していると言われショックを受けました
ですから、飲酒を何とかしようと思って悪戦苦闘を始めました。
- しかし、飲んだり止めたりの繰り返し
- 長くても半年。普通は3か月ぐらいで、再飲酒することが多かったです
- 3か月くらい酒を止めて、失敗してしばらく飲み続ける。
- そしてまた酒を飲まない。
飲んだりやめたりの繰り返しですが肝臓の数値は正常になっていきました
2008年の5月大腸がんになり、手術をしました。
- 癌はショックでしたが、飲みすぎに関する検査の数値はほぼ正常だったので、少しホッとしていました。
- 癌で入院した時に、昔診ていただいた先生の中には「vegaさんお酒はやめたの?」と言ってくださる方もいました
- 手術が終わって以降は、治療が続きました。それから1年弱、酒を飲んでいませんでした

でも飲みたい気持ちを我慢していたよね
アルコール度数0.00%”のノンアルコールビール登場
ところが2009年4月頃、“世界初、アルコール0.00%”のノンアルコール・ビールテイスト飲料”とうたって、ノンアルビールが発売されました。
私は当時も今もほとんどTVを観ませんが世界初とアピールされたノンアルビールのCMは強烈な印象を持っていて、今でも覚えています。

伊達公子さん、古閑美保さんのグラスを持ったおいしそうな笑顔に惹きつけられてしまいました

ノンアルビールは、昔からありました。しかしまずかったのです
- またアルコール専門病院に入院中に、微量でもアルコールが含まれている商品のリストを手渡されていました。
- 栄養ドリンク、洋菓子、酒粕、奈良漬、みりんなど。
- 手渡されたリストの中に、ノンアルビールは含まれていました。
ですから飲んでいなかったのです。
新しいノンアルビールはおいしかった
ところが、「世界初、アルコール0.00%」というフレーズに私の心の底にある「飲みたい病」が目覚めてしまいました。

当時は飲んでいなかったので、コンビニで買い物をすることもなくなっていましたが、久しぶりにわざわざコンビニまで足を運んで商品の品定めをしました
迷う気持ちも若干あり、しばらくは見ているだけ。手を出しませんでした。
5月の中頃になり、大腸がんの手術から約一年経ちました。
- 「もうすぐ飲まなくなってから1年だな。アルコール0.00%だから大丈夫だろう」と思い、ついに飲むようになりました
- 「昔飲んだノンアルビールよりは、とてもよくできているな。おいしいな」と思いました
ノンアル飲料から酔う酒へ
やがて次々と色々なメーカーから新商品が発売されました。
そしてスーパーや、色々なところでも、商品が陳列されるようになりました。
最初はノンアルビールばかりを飲み比べていたのです。

だってゼロだもん、旨いし
しかしと言うか、やはりと言うか。
- ノンアルコールがストロングチューハイに代わり、昔通りの安くて度数の高いウイスキー、ジン、ウオッカに戻るまでに1か月もかかりませんでした
- 私は断酒1年を目前に失敗してしまいました。
- それでも、再びやめられる自信がありました。

もう一度チャレンジしよう。次こそ一年超えが目標だ
ところが、結果はダメでした。
- 止めても1週間も持ちません。それどころか、久しぶりに連続飲酒に陥ってしまいました
- 仕事は解雇になり、3度目のアルコール専門病院の入院となりました
しばらく断酒した後の再飲酒は過去最悪の状態になることを自分自身と仲間の経験から書きました。

ノンアル飲料でも…
入院してみると、私と同じようにアルコール0.00%で躓いた患者がいました。
- 彼の話によると「ノンアル飲料は酒じゃないと思って、飲んでみた。しばらくは大丈夫だったが、結局は専門病院に入院する羽目になった」
- 程度や期間の差はありましたが、同じような失敗をして、その後も入院した仲間がいました。
やはり「アルコール0.00%であっても、人によってはダメなのだ」と痛感しました。
入院中主治医に言われました。

強制はしないけど、炭酸飲料も控えたほうがいいかもしれないね。医学的根拠はないけど…

医師にアドバイスされてからは、自分からお金を出して炭酸飲料を買うことはなくなったのね

少しでも断酒にリスクがあることからは徹底的に遠ざかるようになりました
アルコール依存症は心の病気、だから回復を

私はこの経験を通してアルコール依存症は、心の病気だと強く実感しました
身体にアルコールを入れない期間がしばらくあってもアルコール依存症という病気は自然には治らないということです。
擦り傷のように自然に治癒しないのだと痛感したのです。
- アルコール0.00%の飲料は、大多数の方にとっては便利なのだろうと思います。
- 自助グループでも「ノンアルは大丈夫」といって断酒を続けている人はいます
しかし、私のように日常生活で生きづらさを感じると、酒に手を出してしまう人間には呼び水になってしまうことがあると思います
私は癌の治療のため一年間お酒を「我慢」していました。

もうすぐ一年だな。一年やめたから大丈夫だろう
油断もありました。
しかし恐怖の気持ちから我慢しても心の底の飲みたい病はなくなっていませんでした。
むしろ無理やり押さえつけられていた感情は、ずっとはけ口を求めていたのだろうと思います
- 実際いつもイライラしていました。
- 些細なことで有頂天になったかと思えば、急に落ち込むこともありました。
周囲は「癌だから」ということで、かなり大目に見てくれました。
私は周囲の気遣い・好意を当然と思い、悲劇のヒーローを気取っていたところもありました
悲劇のヒーローのように自己憐憫をする弊害についてまとめました。

不安と自己否定から飲酒を続ける悪循環についてまとめました。


私はノンアルの失敗経験をきっかけに、アルコール無しで日常生活を送る方法を探し、身につけようと思い始めました
- 今思えばノンアルでの失敗の気づきが断酒への第一歩でした
- 私はノンアルの失敗をきっかけに断酒継続ができるようになりました。
- おかげで今は断酒11年半を超えました
自分はどこで線を引くか
ノンアルコールビールが良いか悪いかという話に戻ります。
- ノンアルが良いか悪いかという話になると「醤油だってアルコールは入っているぜ」という方がいます
- 醤油だけでなくアルコールが入っている食品は意外と多いです。
- 恐らく知らない間にアルコールを口にしていることはあるはずです。
問題は「自分はどこで線を引くか」だと思います。

繰り返しますが、私はアルコール依存症は心の病気、精神科の病気だと思っています
心が嫌いな方は、脳のドーパミンが暴走する病気でも構いません。
精神科の病気・脳の病気だと強く感じるのはギャンブル、薬物、セックス、クレプトの方の話を聞く時です。
- 私は他の依存症や摂食障害の方の話を聞くと根本的な部分で共通する悩みを抱えていると強く感じます
- きっかけや病気の現れ方がそれぞれ違っているように見えます
- 肉体の個体差や環境・経験によって表れている結果は違うのですが、病気の根っこの部分はかなり近いように思います。
ですからアルコール依存症の人がノンアルビールを飲んでいいかどうかは物質としてOKかどうか、アルコール濃度がどれくらいかというよりもノンアルビールに何を求めているのか? という面が大きいと思います。
自分の心に聞く
もし自分がノンアルビールに何を求めているかがわからないという方に、一つの考え方を示しておきます。
私がチェックポイントとしているのはノンアルビールを飲んでいることに罪悪感を持っていないかどうかです。

人に隠れて飲んでいたり、本当は飲まないほうがいいんだけど…と思っている方はやめたほうが良いと思います

またノンアルビールは良くないんじゃない? と言われたとき、むきになったり、反発したり

また同じようにノンアルビールを飲んでいる人と「アルコールゼロだよ!!文句ある」と結束したくなる人です
もし以上のような感情があるなら「依存は違った表現形態をもって表れるかもしれない」という考えもあることを知っていただければと思います。
ビールは本当は美味しいのか?
風呂上がりのビールは旨いという人は多いし、CMなどでもそのように宣伝されています。
私自身は子供の頃大酒飲みの父にビールを飲めと半ば強要されてもマズくて飲めませんでした。
「大人はなぜこんな物を喜んで飲むのか?」少年時代の私はいつも不思議でした。
所が酒を飲むようになってからはありとあらゆる種類のアルコール飲料を好むようになりました。
しかし、断酒歴が長くなるにつれアルコール飲料は本当においしかったのか? 味ではなくて酔いを求めていたのではないのか? アルコールの依存性に脳がやられていただけではなかったのか?と強く思うようになりました。

特にビールです。純粋に味が良いから皆飲んでいるのでしょうか?
最後は自己判断
最後は自己判断だと思います。

私は自分の失敗体験を書きました
しかし読者の方が成功するか失敗するかはわかりません。

私は自分が「ああしろ」「こうしろ」と言われるのが好きではありません

読者の皆さんも嫌なはずです
私がブログを書くときに、いつも頭に置いていることがあります。
それは「過去の苦しかった自分が知っていれば良かったかも」と思うことを書いていることです。
- ですから役に立つ方と役に立たない方がいるのは当然です。
- 役に立つ部分と、立たない部分があるのも当然だと思います。
今回の記事も一個人の体験をもとにして書いているので、その中から一つでもヒントになることがあれば幸いです。
