
この記事は「機能不全家族で育てられたM君の物語」です

結論は「アダルトチルドレン・毒親育ちにとって安心して心の傷を癒せる場所が必要」です。

この記事は私の断酒仲間M君の話です
本人了解のもと、記事にさせていただきます。
ただ個人が特定されないよう、話の本筋に関係しない部分は大きく変更しています(彼の体験談から推測されないくらいに)。
私から見るとM君の場合は機能不全家族で育った子供の典型で、うつからアルコール依存症になり、自殺願望が心の底に強くあったように感じました
私とは違う部分も相当ありましたが「機能不全家族で口うるさい親に育てられた子供」という点では似ていたように思います。
機能不全家族に育った子供は、生きづらさを感じます
- 親の虐待(暴力・暴言・威圧)
- 親が子供を批判・過干渉・冷淡に接する
- 親が見栄っ張り、世間体ばかり気にする
- 親の価値観がお金・職業的地位・高学歴
- 両親・嫁姑の争いが絶えない
- 親が病弱・だらしない
そして機能不全家族の問題の特徴は世代間を連鎖することです。
アダルトチルドレン・毒親育ちの愛情は極端に走る特徴があると思います
M君も誰にも愛情を感じない。ただ表面的には、誰に対しても親しげにふるまうタイプでした
機能不全家族で育ったM君の幼少期

M君の父は旧公社で働いていて、無口で神経質。子供たちにも厳しい人だったそうです
- 一方母は実家が裕福で、ピアノの才能がありました。
- 当時としては珍しく、海外へ留学までしていたそうです。
- お嬢様育ちということもあってか、家事や子育てには関心のないお母さんだったそうです
- M君のお母さんは、近所にある実家でピアノを教えていました。
- そして、お父さんよりもはるかに多い収入を得ていたそうです。

「おふくろはいつも命令ばかりしていた。俺たち子どもだけでなく、親父にもお手伝いさんにも」
M君のお父さんは、黙って酒ばかり飲んでいたそうです。
M君がお母さんを嫌いな理由

M君はお母さんを嫌っていました
彼は昭和35年生まれですが、その世代で男の子がピアノを無理やり習わされるというのは、かなりきつかったそうです。
- 当時の男の子の間では、野球人気が全盛でした
- 今のように価値観が多様化していませんでした
ですから、友人が野球をしている中でピアノを習わされていたM君が孤独でつらかったのは分かります

ピアノなんか嫌だ!!友達と野球をしたい
M君のお父さんは、酒を飲んでも暴れたりすることはありませんでした
しかし神経質で潔癖だったそうです。
いったん小言が始まると気が遠くなるほど続き、止めることがなかったそうです。

今思えば親父はいびり酒だったな
- M君はピアノに忙しくて、友人もいませんでした。
- お手伝いさんも、お母さんが口うるさいので、すぐにやめてしまうような状態でした。
M君は子供のころから、親にも祖父母にも素直で従順だったと言っていました
M君のお父さんの死

ところがM君が中学3年生の時、お父さんが亡くなりました。自殺でした
以降M君は、はっきりとお母さんを憎むようになりました。
- やがてシンナーに手を出すようになりました
- もっともM君は、物心ついたころからお母さんを嫌っていたと言います。

俺は偉そうなおふくろが嫌いだった。でも小心者で口うるさい親父も嫌いだった
アダルトチルドレンのM君と飲酒
M君は高校卒業後、実家を出て一人暮らしを始めます。
仕事は真面目にするのですが、転職を繰り返します
酒を飲むようになったのは、一人で暮らすようになってからです。

俺の酒は明るく陽気で皆に好かれていたよ
- 何人かの女性と同棲を繰り返しましたが、仕事と同様続きませんでした
- 30才を過ぎたころから、膵臓をやられ、肝臓をやられ入退院を繰り返しました。
- 40才頃には、アルコール専門病院の入退院を繰り返すようになりました
アダルトチルドレンのM君は感情を押し殺して無理に作っていた
私はM君と同じ病院に入院していました。

M君は何度も入院していて経験豊富だったので頼りになりました
断酒を始めたのも同じころだったので、退院しても連絡は取り合っていました。
- M君は人当たりが良くて、誰とでもそつなく付き合うタイプです。
- 私はいつもにこにこしているM君を羨ましいなと思っていたのです
- M君はいつも冷静で臨機応変なところがありました。
入院中は時々患者同士がけんかをするのですが、彼は状況が悪くても取り乱したりはしませんでした。
しかし付き合いが長くなると、一見にこやかに見える彼の表情は、実は感情を押し殺して無理に作っているように見えてきました。

俺は何をしても無駄だと思うことが多い。目立たないのが一番
M君のお母さんの死
M君のお母さんが、数年前に亡くなりました。

お母さんはお父さんが自殺して、その後祖父母が相次いで亡くなってから、仕事もうまくいかず経済的に困窮していたそうです
M君もお母さんも福祉のお世話にならなければ、生活ができなくなっていたのです。
- M君はお母さんから「一緒に暮らしてほしい」と言われていたけれど、断っていたそうです
- M君はお母さんに、終始冷ややかな態度をとっていました。
私もM君がお母さんのことを吐き捨てるように毒づく話を、聞いたことがあります
お母さんが亡くなった時、M君は周囲の人に何と言ったか?

お母さんは若いころ、美しくて有能で子供たちの自慢の母でした
- やがて彼は再び酒に手をつけました。そして入院。
- ところが病院を脱走してしまい、いったんは行方不明になりました。
- その後同じ病院で入院して、先に退院した人のところへ行っています。
彼は人に好かれるというか、憎めないタイプです。かくまってくれる人がいます
機能不全家族で育った私が思うこと
私自身は父の飲酒が嫌で、長い間父を憎んでいました。

M君も私もアダルトチルドレン・毒親育ちです
しかしM君はお父さんにもお母さんにもおじいさんやおばあさんにも心を許せなかったと言っていました。

誰かに甘えた記憶がない
M君はそう言っていました。

同じACの私から見てもM君の心はかなり「複雑骨折」しているように見えたのです
誰にも愛情を感じない
冒頭でも書きましたが、アダルトチルドレン・毒親育ちの愛情は極端なところがあると思います。
誰にも愛情を感じない。ただ表面的には、誰に対しても親しげにふるまうのです。
安心できる・安定した愛情を求めるのですが、アダルトチルドレンが親との関係で知った愛情は不安定なものでした。
ですから自分では安心したいのに、心の底ではもろさと不安定さを愛情だと錯覚しています。

「誰にも愛情を感じない」「誰に対しても親しげにふるまう」タイプのアダルトチルドレンは愛情の継続が難しいようです
- また行き過ぎた素直さや過度の従順。
- 親や目上の人に対して素直すぎる良い子の振る舞いの底には、親に対する敵意や嫉み・憎しみなどがあると思います
私自身はM君とこの点では似ているなと以前からずっと思っていました
そして怖いなと思ったのが、M君がお母さんの死に接したときの気持ちです。

お母さんは若いころ、美しくて有能で子供たちの自慢の母だった

そう語ったM君は何を守りたかったのでしょうか? いや、 何を失うことが怖かったのでしょうか?
- M君はお母さんの期待にも、お父さんの期待にも応えられなかったことに対して苦しんでいました。
- M君は自助グループで両親の体験を語るとき、両親への不満や攻撃を口にしました。
- しかし、同時に自分のことをとても強く責めていました。

親を否定しているのに、親に認められない俺は「ダメ人間」
アダルトチルドレン・毒親育ちには、他人に対して感情を閉ざしている人が多いと思います。
ただ私は自助グループで、同じように感情を閉ざしがちな人たちとは、かなり深い話ができるようになりました
自助グループでなくてもカウンセリングでもよいと思います。
アダルトチルドレンにとって安心して傷を癒せる場所が増えればいいなと思います
参考記事
克服・回復方法はこちら

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