
この記事は『酒をやめたい気にさせる「マンガで分かる心療内科 依存症編(酒・タバコ・薬物)」』です
マンガで分かる心療内科 依存症編(酒・タバコ・薬物) (ヤングキングコミックス) は2016/7/11に発売されました。
マンガで分かる心療内科(作画:ソウ 『ヤングキング:少年画報社』 )はシリーズで 2010年から連載がスタートし、現在単行本既刊17巻(通巻)+6巻(番外)です。

ギャグ漫画で分かりやすいのですが、書かれている内容は現役の医師がシナリオを書いているだけに教科書的な入門書です

読みやすさと裏腹に依存症だけでなく、メンタルで悩みのある方にとって知っておきたいことがぎっしり詰まっています

そういう意味で一度は読んでおきたいマンガです
ゆうメンタルクリニックは「上野院」「新宿院」「渋谷院」「秋葉原院」「池袋院」「銀座新橋院」「品川院(12月開院)」と沢山あるので通院経験のある方も多いと思います。
わずか10年少しの間で都内のターミナル駅近くに6クリニックを展開しています。

スタッフが親切で通院しやすいことでも有名なクリニックです
普通心療内科は予約制で下手をすると1か月2か月と待たなければいけない場合もあります。
ところがゆうメンタルクリニックはすぐ診てもらえるということでも評判です。

無料で読める著者自身が運営するサイトもあり、この記事にも載せていますので是非読んでいただきたいと思います
作品の概要

まず依存症が「否認の病」であること。今依存症と診断されていなくても「依存は気づかない間にどんどん重くなる病気」を説明しています
そして依存かどうかの判断は「客観的に必要であれば問題なし」「必要でもないのにハマっているのが依存」と書いています。

それでも認めないなら「自分の子供が同じことをしたら応援しますか?」「今すぐ1週間でもいいからやめてみてください」と説得力のあるフレーズが出てきます
ひょっとしたら医師としてのキャリアから出た言葉かもしれません。

ゆうメンタルクリニックより引用

アレン・カーの「禁酒セラピー」から「依存は食虫植物と同じである」という言葉を引用して酒をやめるならできるだけ早いほうがいいということを述べています
年に一度しかお酒を飲まない人でも「それは食虫植物の入り口にいるというだけ」と厳しい意見です。
実際に私自身の経験でも、私の断酒仲間たちの経験からでも「やめたほうがいいかな」と気づいたときにはもう難しくなっているというのは言えると思います。

「ビール1杯」でも苦しくなる人は大勢います。そういう人でも長い年月をかければ少しずつ飲めるようになります
平均寿命がどこまで伸びるかはわかりませんが、高齢者で定年後にアルコール依存症になる人が増えていることから考えると「依存をコントロールできる人はいない」というのは極論とは言えないかもしれません。

ゆうメンタルクリニックより引用

そして「ドパ美」というキャラクターを登場させて「ドーパミンと依存症」の関係を説明しています
「嗜癖でストレスを解消しているのではなく、嗜癖がストレスを生んでいる」ということを「マッチポンプ」という比喩で説明しています。
マッチポンプは「自分でマッチを使い火をつけておいて、自分でポンプを使って水を掛けて消す」という意味です。
つまり自分で酒を飲んで依存症になります。そして酒が切れるとイライラなどのストレスが出ます。
苦しいので酒を飲んでイライラ・ストレスを消します。ところが依存症という病気は必ずまた次の火種を落としていきます。

そうやって自分で種をまき、酒を使って消し続け、どんどん依存症がひどくなるということです
お酒で解消できると思っているストレスは本当はお酒への依存が生み出している。
そしてお酒への依存が次のストレスを生んでいるという厳粛な事実があります。

私の経験からも、お酒でストレスを解消できるというのは錯覚だと思います

ゆうメンタルクリニックより引用
依存症が進行していくとドーパミンの分泌が低下していきます。

お酒に耐性ができるだけでなく、お酒以外のことに楽しみや喜びを感じられなくなります
これを「失楽園仮説」と名づけた医師がいました。
ドーパミンは苦痛を和らげますが、同時に苦痛やストレスに弱くなっていきます。

またお酒をやめられないのは意志や精神力と関係ありません
これは断酒を長く続けている人を見ればわかります。

飲まなくなった後・生きづらさが和らいだ後の人生では、本人の「もともとあった性格」が出てくるので、依存症には意志が強い人も弱い人もいます
つまり依存症への知識が増えてくると「わかっちゃいるけどやめられない」は嘘で「正しい知識を持っていないだけ」ということが分かってくると思います。

ゆうメンタルクリニックより引用

「節酒より断酒のほうが楽」ということを色々な例えで説明しています

「イネイブラー」「距離を取る」「家族のせい・家族の責任ではない」「具体的に話す」など家族が陥りやすい罠についても詳しく書かれています

この本を読めば「とりあえず一日やめてみようかな」「依存していない本当の自分ってどんな風だったっけ」と断酒のモチベーションが上がるのは間違いないと思います

ゆうメンタルクリニックより引用
(本)(Kin)
(単行本)
(電子書籍版)
著者紹介
著者の「ゆうき ゆう」さんは精神科医で作家です。
ゆうメンタルクリニック創設者で「ゆうきゆう」はペンネーム。
神奈川県出身。桐蔭学園から東京大学理科Ⅲ類に現役入学し、東京大学医学部医学科を卒業しています。
東京大学漫画研究会の部長も務めていました。
大学卒業後は、2年間東京大学医学部附属病院精神科で研修医として勤務。
その後下記の病院を2008年に開院しています。
東大医学部は研究者や教授になる人が多いので、開業し、さらに作家までしているのは異例中の異例だと思います。

「論文だけの研究者」ではなく、専門性は十分に生かしつつ、マルチな才能と高い自己マネジメント能力を発揮している人です
「ゆうメンタルクリニック」がカウンセリング中心だということからも、今の医療に対して強く問題意識を持ち、それを実行しているところに非凡さを感じます。
また一連のマンガ作品はシナリオを担当しているそうです。
著作を数えましたが私の分かる範囲で100作近くあるので、普通はこの仕事だけでも驚くべき業績です。

私は「ゆうき ゆう」さんが一人だというのが信じられません
アドラー心理学やアランの幸福論についての著書もあります。
私は脳科学者の本を読んでいると「脳=心」を前提に話を展開している人がとても多いので違和感を感じています。

「ゆうき ゆう」さんは心理学や哲学の素養もあるので、医学の素人にも説得力のある医療・著作を展開している方だと思います
また依存症の人は「言い訳が多い」のですが、実はお医者さんも「言い訳が多い」人種です。
医療現場が専門分化しすぎているので「医療現場でミスは許されない」と言って、患者と向き合うよりお医者さんたちの立場・事情を守ろうとしているように見えることがよくあります。
その点「ゆうき ゆう」さんは、高い実行力・行動力があり今後も注目したい人物の一人です。
勤務医から開業医になるだけでも大変なのに、都内にいくつも開院しています。
私はどういう仕組みで経営しているのか、どうやって開業資金を調達したのかなどにも興味があります。
劣等生の私から見たら羨ましい活躍ぶりです。
この本をお勧めしたい人
- お酒やたばこが好きな人。
- お酒やたばこをやめたくてもやめられない人。
- 依存症という自覚のある人。
- 断酒・禁酒の入門書を探している人。
- 依存の仕組みを基礎から理解したい人。
この本が向かない人
- 意志でやめられると信じ込んでいる人。
- 依存症は根性がないだけと信じ込んでいる人。
- 本なんかでやめられるはずがないと思っている人。
- 漫画としてのクオリティを求めている人。
無料でこちらから作品の一部を読むことができます


著者インタビュー






