
この記事は「依存症にとってスリップは当たり前の症状」です

結論は「スリップした時には、同じ依存症の人の姿や声・言葉を励みにして、もう一度断酒にトライする」です
アルコールに依存するというのは、飲酒をコントロールできない病気になったということです。
ですからアルコール依存症の治療は断酒が基本です。
- アルコール専門病院でも患者は断酒を拒否したいのですが、そのうち仕方なく受け入れようとします。
- そして断酒にチャレンジしようとしますが、簡単にはできません。
再飲酒することをスリップと言います。
依存症から回復したいと思っている人がスリップした時は、何もかも嫌になります。
- スリップをすると自分をダメなやつと思ってしまいます
- スリップをすると家族の悲しむ顔が頭に浮かびます
- スリップをすると断酒仲間たちから取り残されたような…
- スリップをして辛い状況で「失敗したよ」と口に出す・体験談で語るのはとてもつらいことです
しかし依存症にとってスリップはよくあることです
繰り返しますが簡単に断酒できる人は依存症ではないからです。

私も数えきれないほどスリップしました
何より大切なのはスリップしても、もう一度やり直そうと思うことだと思います。
やっぱり自分は意志が弱いダメな人間なんだなどと思わないでください。
依存症である限りスリップは避けられません。
やめられないから依存症です。
飲みたくなる、やめられない、失敗する病気です。
私は正直に失敗を告白する人の勇気に感動します。
もし、自助グループで言いにくかったらTwitterでも構わないのではないでしょうか?
私も失敗したら正直に告白したいです— Vega0323 (@vega0323) September 1, 2019
スリップすると今までやってきたことがすべて無駄だったと思いがちですが、違うと思います。

私はスリップのおかげで断酒に真剣になれました
とは言え上手く失敗を後につなげられた時と、できなかった時があったように思います。

違いは独りで戦ったか? 仲間と戦ったか? だったと思います
- 順調な時は、自分のできることは自分でやる。
- スリップしてどうしようもなくなったときは、素直に仲間の力を借りる。
依存症の人は孤独なのに、独りよがりになりがちです。
同じ依存症の人の姿・声・言葉を励みにすると早く再スタートが切れて、スリップから沢山気づきを得られると思います。
パチンコなどのギャンブル依存も基本的には同じ考えです。
スリップとは再び飲酒すること
アルコール依存症の治療は断酒が基本です。

スリップとは、アルコール依存症の場合は断酒しているのに再び飲酒をすることです
アルコール以外でも薬物・ギャンブルなどをやめている途中で再び薬を使用したり、ギャンブルをしたりすることです。
厚生労働省はアルコール依存症の唯一の治療は「断酒」と述べています
私のスリップ体験

私の今のところ最後のスリップはノンアルビールが原因でした
- スリップした直後は再びやめられる自信がありました。
- もうすぐ断酒1年が迫っていたところでの失敗だったからです。
- 「あと少しで1年だったのに。今度こそ断酒1年」と思いました。
しかしダメでした。1週間も持ちませんでした。連続飲酒になりました。

なぜだかわかりませんが、もうどうでもよくなってしまったのです
後になってから、この時に諦めなければ違っていたかも? と何度も思いました。
しかし、当時は自助グループからも足が遠のいていました。

今は依存症にとってスリップはよくあること。当たり前のことだと思います
- 断酒仲間に正直に「失敗した」と告げて、責める人はいません
- 「また一緒に頑張ろう」その言葉が何よりの励みになります
スリップの体験はこちらにまとめています。

スリップはよくあること
スリップは回復を目指す依存症者には非常によく起こる出来事です。
- 私はアルコール依存症は断酒しなければいけないと知ってからも、3か月の壁をなかなか越えられませんでした。
- 癌の治療のために1年近く我慢しました。
- 脳が委縮していると言われたときも、半年くらいが限界でした。

私は繰り返しスリップし、失敗した都度落ち込みました
スリップを一度も経験しないで回復できる人はめったにいません。
- そもそも依存症とはブレーキが壊れてしまった病気です
- ですから失敗は仕方がないことで、必要以上に恥ずかしがることではないと思うようになりました
長くやめていてもスリップすることについてはこちら

スリップすると何もかも嫌になる

依存症になるまでの長い間私たちはお酒を頼りに生きてきました
そもそもお酒そのものを嫌いでやめようとしたのではありません
生きていけなくなったからやめようと思ったのです
今まで色々な人たちのサポートを受けてきました。
家族・医療機関・自助グループの仲間・Twitterやブログの仲間・友人など。
- もし断酒が順調に進んでいれば、信頼も少しずつ取り戻しかけていたかもしれません。
- 断酒の喜び、ひそかな自信もついてきたでしょう。
- 順調だと思っていた時にスリップしてしまうと、ひどく落ち込んだり、自己嫌悪に陥ります。
- 「もうどうにでもなれ」すべてを投げ出したくなるかもしれません。

私は久しぶりに連続飲酒になって「生きていても意味がない」と自暴自棄になりました
アルコール依存症のスリップは回復のための確実な進歩
しかし、今思えばスリップは確実な進歩だったと思います
進歩の中でもう少し修正をかけるべき局面が来ていたのだと今は思います
私の場合特に最後のスリップは、ひどい状態になりましたが過去の経験が生きました。
- それまで2度アルコール専門病院に入院した経験。
- 不真面目だったが、自助グループに繋がっていた経験。
もしそういった経験がなかったら、あの頃どうなっていたかわかりませんでした。

同時にもう一度自助グループの仲間の力を借りようという気持ちも起こらなかったはずです

やはりスリップをしてもあきらめないのが大事だと思います
スリップして断酒に真剣になれた

私も酒をやめなければいけない理由はたくさんありました
- 脳が委縮していると言われました。
- 癌になりました。
- 転職を繰り返し、経済的にひっ迫していました。
だからやめようという気持ちはありましたが、今思えば弱かったのだろうと思います。

最後の失敗で背水の陣をひかれるような状態になりました
家族も崩壊寸前になりました。首の皮一枚かろうじて残ってくれましたが…。
肉体的にも「次はどうなるか保証できない」と言われました。
- スリップの引き金は何だったのか?
- 自分には何が足りないのか?
- 次に似たような状況が起こったら、どのように危険を察知できるのか?
入院中に色々な人にアドバイスを求めました
自助グループでも仲間の話に聞き入りました
今もう一度同じことができるのかなと思うことがあります。
ミーティング・例会に数多く参加しても、知識経験が増えていても同じだけの熱意は出せないと思います。
やはり危機が迫らないと真剣には行動できないのだと思います。
つまり、スリップとは単なる失敗ではないと思います。

回復を成功させるために「何が自分に必要なのか」を学ぶチャンスです

この失敗の経験が、これから以降のスリップ・再発のリスクを減らせるのではないかと思います
本当に苦しい時は素直に人の力を借りる
そして、これは一人だけで行うのが難しい学びです。
- 依存症専門治療機関を受診しましょう。
- 理解のある支援者のサポートを借りながら、回復への道のりを歩き始めましょう。

今まで続けてきた努力は、一度の失敗で無駄になったわけではないはずです

引き続き断酒に何が必要なのかを求め続けることで、依存症からの回復が可能になっていくと思います
スリップ防止には酒に対して無力であることを認める
スリップ防止に必要な唯一の考えは「酒に対して無力である」ということだと思います。

「酒に対して無力である」を認めなければ、それ以降何を経験しても砂上の楼閣になると思います
私はスリップを繰り返すほどに「無力」ということを思い知るようになりました。

一番大切なのは「アルコールに対して無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた」ですね
スリップの経験は「これまでの自分の取り組み方をあきらめる」機会になります。
手放すのはつらかったのですが、手放そうとした結果可能性は開け始めました。
- 新しい発見、新しい人とのかかわり。
- 自分でできると思っていた「井の中の蛙状態」から脱出できました。
明日飲まないという保証はどこにもありません
しかし、失敗しても必ずもっと大きなものを得られると思います
その時に一人でいるとつらいです
- 今自助グループから足が遠のいている方。どうしても参加したくない方もおられると思います。
- 皆さまざまな理由があります。
- ブログでもTwitterでも構わないと思います。
- 私も今はそれほど活動をできていません。
しかし自助グループが存在し続ける限り、参加していてもいなくても仲間なのです。

アルコール依存症の苦しさを理解できるのは、同じアルコール依存症の人だけです

仲間とはそういう意味であり、仲良しとは違います
スリップした時には、同じ依存症の人の姿や声・言葉を励みにしてもう一度断酒にトライすることをお勧めします。
参考記事
