
この記事は「お酒は頭の回転が速くなる」です

結論は「頭の回転が速いかもしれないと思われる地点はあるが、複雑な思考はできない」です
「お酒を飲むと頭の回転が速くなるかどうか?」の検証結果について紹介します。
- アルコールが入ると会話が弾みますよね!
- 普段真面目な人が冗談を連発したり、はにかみ屋さんが面白おかしく楽しい話をしたり…。
- アルコールが入ると「頭がすっきりして冴える」「創造力がアップし、脳の回転が早くなる」「集中力が上がる」と主張する人は結構います。
- 一方、少量の酒は寝つきをよくすると言われることもあります。
ほろ酔い状態の時、脳はどういった活動をしているのでしょうか?
今回の記事では脳科学の専門家が研究した結果などを基にして、出来るだけわかりやすく飲酒が脳に与える影響をまとめました。
私は普段断酒のためのブログを書いています。
ただお酒のメリット・デメリットを良く知ることは、私のような依存症だけでなく多くの人にとって役に立つのではないかと思っています。
ほろ酔いの時に脳は働くのか?
ほろ酔い状態と普段の脳活動の違いを調べる実験結果(東北大学が中心に行った)があります。
ほろ酔い状態と普段の脳活動の違いを調べる実験結果(東北大学)はこちら
こちらの書籍を参照しています。
頭の回転の計測
成人に二つの図形を連続して提示し、形と位置が同じか違っているか、同じ場所に出てきたかを判断させる。
- 被験者は男女14人。平均年齢24.4歳。
- 空腹状態でエタノール(ウイスキーまたはワイン)量を体重1kg当たり、0.68gを、ピッチが一定になるように20分かけて飲む。
- 被験者の血中アルコール濃度は、飲酒後30分で平均0.7mg。

ちなみに酒気帯び運転は現在0.15mg以上が違反です

一般的にほろ酔い期の血中アルコール濃度は0.5~1.0mg
ほろ酔い期の基準は以下の厚生労働省の記事を基にしました。

つまり運転はできないが、少し気分が良くなった状態ですね

その時の脳活動を機能的MRI(fMRI)で計測する。

fMRIで脳の血流を見ます
脳波は脳のニューロンの電気活動を観察する方法ですがfMRIは脳の血流の変化を磁場の力を使って観察できます。

神経細胞が活動するためには、エネルギーが必要です

つまり栄養を送り込む必要があります
神経細胞が活動を始めると、そばにある血管の血流が早くなります。そのスピードの変化を計測します。

fMRIで脳の血流の変化を見る
脳神経細胞のそばにある血管の血流が増えたり減ったりすることを観察することで、脳の神経細胞が活発に活動しているかどうかを測定するということです。
(結果)

課題の正答率は飲酒前が90%、飲酒後88%でほぼ変わりませんでした

反応時間は飲酒前640mms、飲酒後600mmsと飲酒後が少し早くなっています
fMRIによる脳活動の計測結果は、飲酒前よりも飲酒後のほうが、多くの脳の領域が活性化しています。(左右の後頭葉視覚野、側頭葉、前頭連合野に活性化が認められ、飲酒後は活性化領域が拡大し、新たに活性化する領域も出現している)
(結論)二通りの解釈
二通りの解釈が出ました。
「ほろ酔いのほうが脳が働く」という意見
- 飲酒により反応時間が早くなっていて正答率はほとんど変わらないということは脳内の情報処理の速度が上がったということだ。
- 実際に、たくさんの脳領域が活性化している。
- より多くの部分が活性化した脳によって情報処理能力が高まったのだ。

つまりほろ酔い状態になれば、判断が早くなり、情報処理が高まる
「飲酒で脳の働きが落ちた」という意見
- 飲酒の結果たくさんの脳領域が活性化したということは同じ作業をするのにより多くの脳の活動が必要になったからだ。
- 同じ作業に対して脳活動がより必要になるのは脳の機能が全般的に低下したことを示している。
- そして反応時間が短くなったのは、飲酒により理性の働きが低下したから。

理性の働きが低下すると適当に課題をこなした可能性が高く、その結果、時間が短くなり、正答率が少し下がったのである
皆さんはどちらがより正しいと思われますか?
実は「専門家であっても意見が分かれています」
はっきりしているのは

アルコールを飲んだからすぐに脳の働きが低下するわけではない

脳が飲酒前より活発に働くように観察される段階がある
ということではないでしょうか?

もちろん、飲みすぎると脳の働きは低下します
ひょっとすると「脳が最適に働くほろ酔い期」があるかもしれないと、言えなくもありません。
頭の回転のテスト
似たような実験は海外でも行われています。
米イリノイ大学シカゴ校で、認知機能のテスト(変化の見落とし)を48名の男性に対して行いました。
- イリノイ大学のテストではアルコール血中濃度0.08%ですが、やはり飲酒したグループの方が、飲んでないグループより、すばやく違いに気づくことができたと報告されています。
- 同校では、言葉の連想テストを行いました。言葉の連想テストでも、飲酒グループの方が好成績だったようです。

二つの結果から「適度な飲酒は創造力を向上させる」とコメントしています
前頭葉が麻痺すると頭の回転は悪くなる
- ところが同じ米イリノイ大学シカゴ校の前頭葉のワーキングメモリーを働かせる必要のある実験では違った結果が出ました。
- 暗算問題を繰り返し解くのですが、単に解答を書くのではなく、いくつか前に行った暗算の解答を書くといったテストです。
任天堂DSの脳トレゲームでよく似たものがあったのでご存知の方も多いと思います。
計算と記憶という複数の作業を同時に行う必要があるので、集中力が必要ですし、かなり前頭前野を使います。
以前の単純なテストと違い集中力、高度の脳の働きが必要となってきます。

前頭葉のワーキングメモリーのテストでは、飲酒により成績が15-30%ほど低下したそうです

つまり飲酒をすると、集中力や記憶力をより必要とする作業は苦手になるのかもしれません
飲酒運転がダメな理由
例えば飲酒と自動車運転の実験では、どれも大体同じようなマイナスの結果が出ているようです。
飲酒には個人差があります。

しかしアルコールは運転技術・行動に極めて低い血中濃度(ほんの少し飲んだだけ)から影響を与えます

しかも血中濃度が高く(酔いが進む)なるほど、影響も強くなります

素面(しらふ)より飲酒時の方が、運転技術が向上するという証拠は全くないというのが、飲酒運転に厳しい罰則が果たされている根拠です
上記の記事、厚生労働省のe-ヘルスネット「アルコールの運転技能への影響」によると

「 集中力が下がる」のは、ビール350mL缶1本未満から

「多方面への注意力が向かなくなる 」「反応時間が遅れる 」のは、350mL缶1本程度から

「ハンドル操作がうまくできなくなる」のは、500mL缶1本弱から

「視覚機能が阻害される 」のは、500mL缶1本程度から

「規制を無視し始める」のは、350mL缶2本弱からです
課題の難しさによって違いがあるのかもしれませんが、やはり飲酒をすると集中力と 正確さは低下すると考えるのが妥当のように思えます。
そしてある程度の飲酒をした後は、仮にアルコールの血中濃度が基準以下であっても集中力や判断力は簡単に回復しません。
ですから飲み過ぎた翌朝などは運転を控えるほうが良いのは間違いありません。
詳しくはこちら

結論は、ほろ酔い状態で活性化した脳はアイデアが必要な会議に利用できるかもしれない
アイデアを出すためには「固定観念を取り除く。白紙の気持ちで自由に発想を出す」ことが大切だなどとよく言われます。
- 固定観念を外し量を出すことが必要です。
- 固定観念を外すために自由に意見を出し合い、出たアイデアを批判しないことが求められます。

役職の上下などがあると邪魔です

アイデアに役職や年齢や男女の違いはありません
会社の企画会議などでは、工夫次第で使えるかもしれません。
飲みすぎて酔っぱらった人は「退場」。醒めたら戻るなどです。
- 一人でそれができるかどうかと言われれば「人によりけり」ではないでしょうか?
- 自分自身が「ほろ酔い」であることを、客観的に判定できることが求められると思います。
結論とまとめ

ほろ酔いは頭の回転が速いかもしれないと思われる地点がある

しかし前頭葉の機能が低下するので、複雑な思考は不向き。記憶と計算の組み合わせ・集中力・正確さなどは低下する

企画会議などではやり方次第で使えるかもしれない
そもそも私のような依存症者は残念ですが「ほろ酔い」を実感できません。
「そろそろやめたら?」と言われても「こんなのまだ飲んだうちに入らないよ」と答えてしまうからです。
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